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奥村徹弁護士の見解(06-6363-2151 hp@okumura-tanaka-law.com)

奥村徹(大阪弁護士会)の弁護士業務と研究活動(不正アクセス禁止法・児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 青少年健全育成条例、強制わいせつ罪、強姦罪)、児童福祉法、児童に対する性的虐待・性犯罪、著作権法、信用毀損、名誉毀損、わいせつ図画公然陳列、電子計算機損壊等業務妨害、その他サイバー犯罪、プロバイダ責任制限法などが中心です。)の一片を御紹介しています。専門分野は御覧の通りです。  福祉犯や児童に対する性犯罪の弁護経験は裁判所に係属した事件だけで150件を超えました。

真剣交際の要件〜杉本啓二「青少年条例における淫行処罰規定と少年事件-最高裁昭和60年10月23日大法廷判決を契機としてー」判例タイムズ第586号

 古い論稿ですが、少年による淫行についての解説が出ています。
最判S60が「本条例10条1項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。」というので、検察官は「○月×日○時ころ、ホテル○○において、A子が18歳に満たない青少年であることを知りながら、単に性欲を満たす目的で、A子と性交し、もって、青少年と淫行した」という公訴事実を立証すれば真剣交際ではない性行為ということで有罪となり、実務上は、真剣交際であるという主張・立証責任が被告人に課せられています。

「淫行」該当性の判断基準
大法廷判決は、「淫行」に当たるかどうかの判断をするにあたって、当時における両者のそれぞれの年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付合いの態様等の諸事情という基準を示した。
ところで、青少年の健全な育成を趣旨.目的とする青少年条例において、青少年(通例、一八歳未溝の者と規定されている)は保護される立場にあるのが原則であるが、「淫行」については、青少年を含めた少年(二〇歳に満たない者をいう)もこの行為の主体となりうることを認めねばならず、「罪を犯した」または刑罰法令に触れる行為をした」ものとして家庭裁判所の審判に付されることになる(少年法三条一項)。
こうした、少年を主体とする淫行処罰規定違反事件において、「淫行」に該当するかどうかを判断するに際し考慮すべき点を、最高裁の示した先の判断甚準を踏まえて論じてみる。
?両者のそれぞれの年齢
淫行処罰規定違反事件の場合、罪を犯した者と名指しされるのは通例男子少年の側であって、一応、この現状をもとにして論ずることとする。
一般的にいえば、両者の年齢差が大きい湯合のほうが「淫行」該当性が認められやすくなり、さほど年齢差のない少年と少女の間でなされた性行為については、それが大人の眼からみて必ずしも道徳的なものといえないものであっても、自由恋愛の範疇に属するもので、「淫行」とはいえない場合が多いといえよう。
・・・
次に、少女の年齢についてであるが、前述したように、谷口裁判官の意見は、一六歳に満たない年少少年に対する性交又は性交類似行為の如きは、そこに至る手段・方法のいかんを問わず一律に処罰する合理性があるが、これを超える年長少年については一律処罰は適正とはいえないと述べている。
たしかに、婚姻年齢に達しているかどうかは少女の側の性に対する知見の程度を示す有力な手がかりであるが、年長少年に対する関係においても、不正な手段を用いて性行為を行った場合だけでなく、単に性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような場合にも、これを「淫行」とすべきであろうし、逆に、年少少年に対する関係においても、ことに、青少年についての免責条項のない青少年条例の下で一八歳未満の少年がその相手方である場合、「淫行」に該当しないと考えるべき場合もあろうと思われる。
?性交渉に至る経緯
両者の出会いから初めて性関係をもつまでの期間、その間の交際状況等は「淫行」該当性を判断するに際して重要な意味をもつ。
本判決の事案も、初対面の少女とその日のうちに性交渉をもったものであるが、捜査機関から送致されてくる事例にも初対面で性行為にまで至ったものが多いし、それまでに数回会ったことがあるという事例にしても、性行為に至る経過がやや唐突であると感じられる場合が多い(もっとも、この点は、供述調書の記載の仕方・程度によりそうなる場合もないとはいえない)
 なお、性行為に至る過程において、少女が少年側と同等もしくはそれ以上の立場にあったような場合でも、「淫行」に該当する場合がまったく無いとはいいきれないと先に述べたが、このような事情がある場合に、「淫行」該当性を認めるためには、他に特段の事情があるかどうかを十分に検討する必要があろう。
そのほか、実務を担当していて、性交渉に至る経緯の中で「淫行」を認める方向に作用する事由であると評価した例として、少年と少女がシンナーを吸引し、その幻覚状態の下で性行為を行った場合、複数の少年が複数の少女に誘いをかけて一人の少年宅に引き入れ、少年らの側で性行為の相手方となる少女を指名し、少女らの側でこれを承諾したうえ、襖越しにそれぞれのカップルが性行為を行ったという、いわゆる乱交と目すぺき場合等があった。
?両者間の付合いの態様
多数意見の判示を借用すれば、真摯な交際関係にあると認められるような事情が、両者間の付合いの中に窺えるかどうかということになろう。
具体的には、両者の交際を保護者の側で了承しているかどうか、性関係をもった後の両者の交際状況等が挙げられる。
なお、少年少女の捜査機関に対する供述調書には、一様に、結婚など考えたことがないという記載がある。
たしかに、婚姻の意思があるような場合にはまず「淫行」に当たらないであろうが、逆に婚姻の意思がないという場合にこれを過大視し、「淫行」に該当すると安易に決めつけてしまうのは問題であろう。
また一方で、少女の捜査機関に対する供述調書において、少年に対して好意を抱いていたので性行為に応じたという記載がされている場合もある。
両者間に人格的結合がある場合には多数意見のいう第二の形態には当たらないと解されるが、このような調書上の内心的事情のみにとらわれず、客観的諸事情を総合して判断することが条例の趣旨に沿うものと思われる。