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奥村徹弁護士の見解(06-6363-2151 hp@okumura-tanaka-law.com)

奥村徹(大阪弁護士会)の弁護士業務と研究活動(不正アクセス禁止法・児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律 青少年健全育成条例、強制わいせつ罪、強姦罪)、児童福祉法、児童に対する性的虐待・性犯罪、著作権法、信用毀損、名誉毀損、わいせつ図画公然陳列、電子計算機損壊等業務妨害、その他サイバー犯罪、プロバイダ責任制限法などが中心です。)の一片を御紹介しています。専門分野は御覧の通りです。  福祉犯や児童に対する性犯罪の弁護経験は裁判所に係属した事件だけで150件を超えました。

三鷹事件における児童ポルノ罪

 殺人で懲役22年(求刑無期懲役)の判決に検察官控訴しないでおいて、被告人控訴で差し戻されたら、児童ポルノ陳列を追起訴して、懲役25年という求刑とか量刑はないよな。控訴したら重くなって不利益変更ということになる。
 普通の性犯罪だと、児童ポルノ罪の量刑は+1年くらいですが、裁判員は、殺人被告事件なのに証拠に出てきたポルノ画像に飛びついちゃって22年という量刑にしてしまった。
 控訴理由でも児童の裸体画像の公開について起訴されていない「名誉毀損罪(懲役3年)」しか指摘してなくて「児童ポルノ公然陳列罪(懲役5年)」に気付いていない。
 追起訴された児童ポルノ陳列についても、数回に分けてアップしているから併合罪(最高7年6月)になりうるのをわざわざわいせつ陳列を付けて包括一罪(最高5年)にして軽く起訴している。それでいて量刑不当で検察官控訴していて、ちぐはぐだ。

住居侵入,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
東京地方裁判所立川支部判決平成26年8月1日
【判示事項】 インターネット上の交流サイトで知り合った元交際相手(当時18歳)を殺害する目的で,被害者宅の2階の窓から侵入し,家屋内で6時間以上も待ち伏せた上,逃げる被害者を追いかけ,被害者の右頸部及び腹部等をペティナイフで多数回突き刺すなどして失血死させた事案。被告人の成育歴が犯行動機に一定の影響を与えたとしても,本件犯行後,被告人が被害者の裸の画像等をインターネット上で広く閲覧,ダウンロードできる状態にし,被害者を手ひどく傷つけるなど,高い計画性と強い殺意があり,きわめて卑劣であるとして,懲役22年を言い渡した事例
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

判例番号】 L07020041
住居侵入,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決平成27年2月6日
【判示事項】 元交際相手である被害女性(当時18歳)宅に侵入し,その頸部や腹部等を所持したペティナイフで突き刺して殺害した殺人等被告事件の被告人を懲役22年に処した原審の訴訟手続について,被告人が殺害前後に被害者の生前の裸の画像等をインターネット上の画像投稿サイトに投稿するなどしたという余罪に当たる事実に関し,原審では,起訴された罪の審理に必要な範囲を超えた主張,立証がされている上,原判決における「量刑の理由」の説示内容を検討すると,本件の犯情や一般情状として考慮できる範囲を超え,実質的には前記余罪をも併せて処罰するような考慮をして被告人に対する刑を量定した疑いがあるとして,訴訟手続の法令違反の論旨を認め,原判決を破棄し,原審に差し戻した事例
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 原判決を破棄する。
 本件を東京地方裁判所に差し戻す。
そして,本論旨は,原判決は本件投稿行為を犯情の一つとして考慮し,起訴されていない名誉棄損罪について実質的に処罰するに等しい結果となっており,憲法31条に違反する訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 当裁判所は,本件投稿行為に関して,起訴された各罪の審理に必要な範囲を超えた主張・立証がされている上,原判決の説示内容を検討すると,本件各罪の犯情及び一般情状として考慮できる範囲を超え,実質的にはこれをも併せて処罰するかのような考慮をして被告人に対する刑を量定した疑いがあり,原審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があると判断した。
 以下,その理由を述べる。
 2 原審の審理経過をみると,本件投稿行為に関わる部分は,概ね次のとおりである。
・・・・
3 ところで,起訴されていない犯罪事実については,これをいわゆる余罪として認定し,実質上処罰する趣旨で量刑資料に考慮し,このために被告人を重く処罰することは許されないが,被告人の性格,経歴,犯罪の動機,目的,方法等の情状を推知するための資料として考慮することは許されるものである。すなわち,起訴された犯罪との関係でその違法性や責任非難を高める事情であればその犯情として考慮され,そうでなければ,再犯可能性等の一般情状として斟酌できるにとどまるのである(それ自体は余罪には当たらない行為についても同様である)。また,処罰の対象となっておらず,前述した限度で考慮できる事情については,その点に関する証拠調べも自ずと限定され,起訴された事実と同等の証拠調べをすることは許されないというべきである。
 この点原判決は,前記2のとおり,本件投稿行為とその結果について,被告人に対する非難を高める事情として考慮する必要がある旨説示しているところ,確かに被告人も,捜査段階及び原審公判で,本件投稿行為を行った理由について,被害者を殺すだけでは飽き足らず,恨みがますます募ったため,被害者がこれまで築いたすべてを壊してやろうと思った,被害者の尊厳を傷付けたいと思った旨供述しているのであって,本件投稿行為は,被害者に対する恨みの感情などという本件殺人等と同じ動機に基づくもので,その恨み,憎しみの深さ,動機の強固さや犯行の計画性の高さを示しており,その限りでは殺人の犯情として考慮でき,また,殺害行為後に計画どおり投稿したことは,自己顕示欲や身勝手な正当性の主張を示すもので,被告人の共感性の乏しさ,自己中心性を表したものとして,一般情状としても非難の程度を強めるものであるといえる。また,何ものにも代え難い家族を奪われたばかりか,その社会的評価まで貶められた遺族の被害感情を高めるものでもあるといえる。そうすると,本件投稿行為も,あくまでもこのような被告人の情状を推知するための資料の限度であれば,量刑に当たって考慮することが許されることは当然である。
 しかしながら,本件は,いわゆるリベンジポルノに関する殺人事件として世間から注目を浴びていた事案で,本件投稿行為が量刑上過大に影響しかねないおそれがあることが明らかであったにもかかわらず,前記2でみたところによれば,原裁判所は,公判前整理手続における争点確認で,本件投稿行為に関する検察官の主張について,単に「犯行後に被害者の裸体の画像をインターネット上に公開するなど犯行後の行動が悪質であること」とのみ整理し,この犯行後の事情が,量刑の中心となる人の生命を奪う犯罪である殺人との関係においてどのような量刑要素をどの程度推知させるものかについて検討していないばかりか,この点に関する適切な証拠調べの範囲,方法等についても検討した形跡は見当たらない。公判においても,やはりその点を明確にしないまま,検察官が冒頭陳述や論告で重い求刑を導く事情の一つとして主張するに任せている。その立証に関しても,前記2のとおり,本件投稿行為の動機,目的,画像等のアップロードなどの具体的行為,その結果や影響など,起訴された犯罪と同様に,証拠書類及び証人による積極的かつ詳細な立証を許している。被害者の父親が娘の殺害に加え本件投稿行為によって受けた被害,影響について証言するのは当然許されることとしても,殺人に関する情状を推知するための資料とする趣旨で,本件投稿行為に関する証拠調べをするのであれば,その証言やアップロードに関する書証のみでも立証は足りるはずであるのに,原裁判所は,本件投稿行為の結果や影響を具体的に調査した警察官の証人を人証のトップに据え,その結果や影響の詳細を証言させるなどの立証を許しているのであって,このような立証は殺人の情状として許される立証の範囲を超えているといわざるを得ない。さらに,原判決が「量刑の理由」の項で説示しているところも前記2でみたとおりであるが,それによれば,原判決は要するに,犯行態様や動機等の一般的な犯情とは別に,名誉棄損罪に該当する本件投稿行為について,被告人の刑事責任を無期懲役刑にまで導くほどのものではないが,同一の事件類型(男女関係のトラブルによる刃物を用いた被害者1名の殺人事件)における量刑の幅の上限付近にまで導く事情として考慮した旨を説示するものと理解するほかない。そうすると,こうした審理の経過及び内容,量刑理由に関する判文を総合すれば,原判決には,前記の限度を超え,起訴されていない余罪である名誉棄損罪に該当する事実を認定し,これをも実質上処罰する趣旨で量刑判断を行った疑いがあるといわざるを得ない。
 なお,原判決は,既にみたように,本件投稿行為により被害者の社会的存在を手ひどく傷付けた行為は,殺害行為に密接に関連する旨説示し,当審検察官も,本件投稿行為は殺害行為と密接に関連するものであって殺人の犯情に属する事情にほかならず,原判決は起訴されていない別罪を実質的に処罰する趣旨で量刑をしたものではない旨主張している。しかしながら,本件投稿行為が殺害行為と密接に関連しその犯情にも関連するということと,それを実質的に余罪として認定し処罰する趣旨で量刑をすることとはそもそも別個の事柄であって,たとえ前者が認められるとしても,当然に後者に該当しないということにはならないというべきである(例えば,保険金目的の殺人について,詐欺罪では起訴されていないにもかかわらず,保険金詐欺の実行行為や利得額,その費消状況等が明らかになる証拠を採用して保険会社にも被害を与えているとの立証を許し,保険金を詐取したこと自体を殺人の刑を加重する要素として考慮することが許されないことは明らかであり,単に密接に関連していれば併せて考慮してよいということにはならない)。本件投稿行為は,それがどのように殺人の量刑要素に影響するのかという視点から考慮すべき事情であって,単に殺害行為と密接に関連するという理由のみで直ちに刑を加重できる事情であると捉えるべきではない。被告人は,被害者に対する恨みの感情から,本件殺人等の何日も前に被害者の裸の画像等をインターネット上に投稿するなどしておき,本件殺人等の約1時間半後に,これらをより不特定多数の者が閲覧できる状態にしたというのであって,本件投稿行為は,殺人の実行行為とは,生命と名誉という被害法益も異なる全く別個の加害行為であり,これを異なる機会に行ったのであるから,本来的には殺人とは別個の評価の対象となる犯罪行為である(これが起訴されれば,殺人とは併合罪の関係になる)。単に時期的に近接しているとか,被害者への復讐という同じ目的で行われている点を捉えて,本件投稿行為を殺人罪の刑の加重要素として評価することは正当でない。
 4 以上の次第で,原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があり,原判決はこの点において破棄を免れないというべきである。
 論旨は理由がある

住居侵入,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件
【事件番号】 東京地方裁判所立川支部判決/平成27年(わ)第253号、平成27年(わ)第888号
【判決日付】 平成28年3月15日
【判示事項】 元交際相手(当時18歳)の被害者宅に侵入し,ペティナイフで被害者を殺害し,被害者の性的な写真をインターネット上に陳列した事案。本件は,東京高裁が,一審判決につき起訴されていない画像投稿行為に関して実質上処罰する趣旨で量刑判断を行った疑いがあるとして,差し戻した後の審理。差戻し後,画像投稿行為について追起訴されたため,弁護人は,時機に遅れた訴追権の行使で,訴追裁量を逸脱し違法であるから,公訴棄却されるべきと主張した。裁判所は,本件の性質,内容を踏まえれば,公訴権を発動するか否かの判断に際し,被害者側の意向は当然考慮されて然るべきで,本件追起訴は違法,無効とはいえないとし,殺害行為の態様は執拗かつ残酷であるなどとして,懲役22年に処した事例
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 被告人を懲役22年に処する。
 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
 押収してあるペティナイフ1丁(平成27年押第36号符号2)を没収する。

http://mainichi.jp/articles/20170124/k00/00e/040/263000c
被告が撮影した女子高生の画像をインターネットに投稿して拡散させたことから、事件は「リベンジポルノ」の問題が顕在化するきっかけになった。

 差し戻し前の1審判決は、画像の投稿を「殺害と密接に関連する特に悪質な事情」と認めて懲役22年(求刑・無期懲役)とした。これに対して、15年2月の東京高裁判決は「起訴されていない画像投稿行為を実質的に処罰した疑いがある」とし1審判決を破棄し、審理を差し戻した。

 このため、遺族は画像投稿行為の処罰を求め、児童買春・ポルノ禁止法違反(公然陳列)容疑で被告を告訴、検察側は同法違反などで被告を追起訴した。差し戻し審の立川支部判決は追起訴分も含めた量刑を懲役22年(求刑・懲役25年)とした。

 弁護側が差し戻し後の追起訴を「違法」と主張したのに対し、秋吉裁判長はこの日の判決で「特殊な経過だが、遺族の意向に配慮したのは当然で違法とはいえない」と指摘。検察側が「軽すぎる」、被告側が「重すぎる」と訴えた量刑についても「変更の必要はない」と判断した。

 判決によると、被告は13年10月8日、高校生宅に侵入して首や腹をナイフで刺して殺害。同年7〜10月に高校生の画像13点をサイトに保存したうえで、10月6〜8日にURLをネット上で公開し、不特定多数が閲覧できる状態にした。【近松仁太郎】

裁判の経緯検証を
 24日の東京高裁判決は、差し戻し後に追加された「リベンジポルノ」の起訴を適法と認め、懲役22年とした。当初の東京地裁立川支部判決(14年8月)と、高裁の審理差し戻し後の同支部判決も同じ懲役22年。この間、被害者の遺族は長い時間をかけて行き来する公判に向き合わなければならなかった。迷走した司法の責任は重い。

 遺族は当初、被告が娘の画像を拡散したことに傷付き、画像がさらに拡散することを恐れて告訴を控えた。だが、差し戻し後は量刑が軽くなることを防ぐため告訴に踏み切るしかなかった。苦渋の決断だったが、裁判所の量刑は同じだった。

 関係者が問題として指摘するのは、最初の地裁支部判決後、控訴を見送った検察の判断ミスだ。被告に不利な方向に判決を見直すことが法律上許されなくなり量刑が22年を上回る可能性を閉ざしてしまった。また、地裁支部や検察が公判開始前の争点整理でリベンジポルノをどう審理するか十分に詰めていなかったことが、審理差し戻しを招いたとの声もある。検察と裁判所は今回の裁判の経緯を検証し、訴訟手続きのあり方を問い直すべきだ。【近松仁太郎】